維新派「透視図」と、シルヴィ・ギエム「ボレロ」
維新派の10年ぶりの大阪野外公演「透視図」千秋楽に行ってきた。
私は屋内公演しか見たことがなかったので、本当に楽しみで。
維新派を知らない方のために。
大阪で1970年に結成された劇団。
主宰は松本雄吉さん。
内橋和久さんが音楽監督。
何もないところに、自分たちで巨大な野外劇場を作って上演し、
終わったら更地に戻して去っていく。
犬島とか琵琶湖とか熊野大社とかとか...興味深い場所ばかりを選ばれる。
ロケーションと公演の内容、どちらが先に決まるのか知らないけれど、
その組み合わせの妙は完璧で、他ではきっと成立しないと思う。
中之島GATEという安治川沿いに、キャンプと呼びたいような大きな屋台村が出現。
維新派の野外劇場といえば、の屋台村。
真ん中の広場には、やぐらが組まれ、生演奏に合わせて綱渡りが繰り広げられる。
終演後の演者さんたちの為に、巨大な豚が炭火でじっくり丸焼き中。
たき火やキャンドルを囲み、美味しいお酒と食事。
ノスタルジックで、異国感もあり、屋台村だけでも本当に楽しくて、
何日も通ったという人も多いと思う(私も2回行きました)。
屋台村の奥に、屋外劇場は組まれていました。
席に着くと、川にせり出しているかのように感じる。
ステージバックに安治川が広がる。その向こうに中之島、大阪の町。
走る車のライト、ビルの屋上に点滅する赤いライト。
暗い水面にうつりユラユラ揺れる光。
維新派といえばの白塗りと白い体操服の40人ほどの群衆劇、
変拍子に合わせて繰り返し発せられる言葉たち。
少しずつ変化しながら、口々に発せられる言葉。
少しずつ変化しながら、繰り返される動き。
対面する音楽と声と動きから、勝手に規則を見つける自分の脳。
軽いトランス状態。演劇だけどコンテンポラリーダンスでもあり。
川と海と大阪。海から川に入り、大阪にたどり着く人、モノ。
たどり着いた大阪で生まれる人、モノ。
変化する町。生きている町。町を構成する人、モノ。
色んな時代を頭の中が行き交って、今の自分の足下をみたりして。
本当に素晴らしかった。面白かった。
公演を見てから、屋台村に戻ると、また違って見えた。
いったい私は、いつの大阪にいつんだろう。
次はいつどこで見れるんだろう。
実はモダンバレエの経験がありまして、こういう表現を見ると血が騒ぐのであります。
そう。そうそう。少し前だけど、興奮するダンスを見たんだった。
友達に誘ってもらって、「東京バレエ50周年祝祭ガラ」に。
場所はフェスティバルホール。生のオーケストラの演奏に合わせてバレエ。
すんごいチケットが高かったんだけど、行ってよかった。
まったくバレエについては知識がなかったのだけど、
シルヴィ・ギエムの「ボレロ」興奮しました。美しかった。
遠くから薄く聞こえだす小太鼓のリズム。
続いて届くフルートの音色。繰り返されるおなじみのあのメロディです。
そして、ステージ中央の赤い円卓に細いスポットライトで、ギエムの腕先が浮かび上がる。
この時点で、もう鳥肌が。
女性とは思えない力強さ、女性ならではのしなやかさ。
ボレロって男性が踊るものだと思い込んでいたのだけど、
実は最初は女性が踊るための楽曲だったそうです。
円卓の周りを囲む男性陣は水夫。円卓の上では1人の女性がメロディに乗って凛と踊る。
ストリップなのだとか。
なるほど。
本当に感動した。
モダンバレエの先生を思い出した。
思春期の私には、なんだか先生のしなやかな体が気持ち悪かったのだけど、
あれは力強い色気のようなものを、わたしは先生から感じ取っていたのかもしれないな。
とにかく、シルヴィ・ギエムは来年50歳で引退するそうです。
目撃できてよかった。刺激的でした。誘ってくれた友達に感謝。
ちなみに「スプリング・アンド・フォール」という演目も、
コンテンポラリーでめちゃ好みでした。