うたたねシアター

「プール」(2009/09/20 テーマ:BEAUTIFUL)

この連載は、ずいぶん自分勝手な映画コラムですが、今月はよりいっそう個人的な観点での文章になってしまいそう。あらかじめ断っておきます。
今月のテーマは「ビューティフル」ですが、美しい心ってどういうものなんだろうかと、実はここのところずっと考えています。私は自分で作った「○○してはいけない」のオリに自分を閉じ込めてしまいがちで、窮屈になりすぎて、時々破綻してしまいます。「私が我慢すれば」「私のせいで」「私なんか」のオリもあります。突き詰めてしまうんだと思う。バランスが悪いのです。この心の在り方は美しくないと言われました。心が奇麗でいることが大事だと。「あなたは心が美しくない」と言われたってことですから、余計に落ち込みました。美しい心って何?
そして見た映画が「プール」。「かもめ食堂」「めがね」の流れを汲む小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮らが出演のやわらかい映画。4年前、娘・さよを日本に残してチェンマイにあるゲストハウスで働き始めた母・京子。そんな母のもとに、大学の卒業旅行を兼ねて、さよが訪ねてきます。久しぶりに会う母は、自分の知らない人たちと平和に暮らしていました。小学生の男の子まで一緒に住み、母は我が子のように可愛がっているのです。自分と祖母のことは放っておきながら、なんて勝手な!
正直な話、さよの心模様の変化に、私はついていけませんでいた。だけど旅行にいったり、ゆっくり休んだりして、数週間経った今、ようやく気持ちがスッキリしてきました。きっと、母がそうしたように、さよもまた、自分の心を自由にしてあげたのだと思う。大げさにいうと魂を解放するっていうことかな。こだわりも責任も、過度に守りすぎなくていいんだと思う。私も自分を解放してあげたい。自分の心を美しくなかったなんて絶対思わない。だけど、バランスのとれた状態が美しい心と表現されるのだとしたら、そうありたい。ゆっくり効く映画でした。