うたたねシアター

「博士の愛した数式」(2005/12/20 テーマ:ゴージャス)

とても豪華なスタッフ・キャストによって、慎ましやかな美しい心が描きだされた映画「博士の愛した数式」を紹介します。原作は芥川賞作家・小川洋子のベストセラー。監督は「雨あがる」で日本アカデミー賞を受賞した小泉堯史監督。そして寺尾聰、深津絵里、齋藤隆成、吉岡秀隆、浅丘ルリ子という素晴らしい俳優陣!完璧です。まず、寺尾聰演じる主人公の数学博士は交通事故による「記憶が80分しかもたない」というハンデを背負っています。そこに新しくやって来た家政婦・杏子が深津絵里。いつしか息子の齋藤隆成も学校帰りにやってくるようになり、毎日「初めまして」を繰り返しながらも、それなりに穏やかな日々が流れ始めます。博士は数学をまるで物語を話すかのように家政婦親子に聞かせます。これがとっても数式に対する愛情に満ちていて、数学の美しさを実感させてくれました。ワタクシもちろん数学はサッパリですが、数学の無駄がないスマートさって独特だなぁと思います。でも円周率みたいに無限に広がるものもあるんですよね。そしてその割り切れないところがポイントになる、ずばり博士の愛した数式が鍵となって出てくるのです。そう、博士が背負っているのは記憶障害だけではなく、もっと人間臭い運命ともいうべき一生償えない罪。80分後に記憶が振り出しに戻るなら、どれほど孤独だろう。だって、どんなに楽しいことがあっても誰かと心が寄り添っても、全部忘れてしまうんだから。ならば全てをあきらめ何も求めず、寂しさだけを感じて思い出を胸に、ただ生きていくのみ。それがまた償いにもなる。博士はその人間関係をも数式におきかえて自分を納得させ説明しているのです。だけど、人っていうのは計算通りじゃない。良い計算外の変化も生むものなんです。私、本当に静かに感動しました。さぁ貴方は博士の愛した数式の意味をどんなふうに感じるかしら?まったく文系の私はこんなふうに解釈しましたのよ。