ぶつぶつ日記

シャッターチャンス


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これ、いい写真だと思うのだけど。どーかしら。
はい、山陰に行ってきました。




今回の旅の目的。島根県立美術館で、奈良原一高の写真を見た。
黒神村、軍艦島、修道院、監獄、隔絶された土地、閉ざされた壁の中の世界。
生きるということ。

展示のキャプションで、奈良原さんの文章を読んだ。
その文章に衝撃をうけた。私の体中の細胞が酸素不足になって一生懸命に新鮮な空気を取り入れようとパクパクとしてた。細胞が口をパクパクしてた。何度も何度も読み返さなくては、自分の中にしっかりと落ちてこないほどのショックだった。
私の解釈なので、違うところがあったら申し訳ないのだけど、戦時中に育った奈良原さんは、爆撃や貧しさが当たり前という環境だったので、戦争が終わると心が空っぽになったという。そして、自らの中にある空虚さを、被写体と向き合うことで埋めようとした、と。
『不毛、それ自体が生きてゆく手がかりとなり始めた』
私、この1行に動けなくなってしまった。


1点1点の写真がもつパワーが強くて、受け止めるのが大変だった。
しかも展示数が異様なほど多くて、本当に途中で息が出来なくなってしまった。吐きそうだった。
個人的には、軍艦島と、北海道の修道院の写真が好きだ。

同時に森山大道や植田正治の写真も見た。
わたし、頭と心を使いすぎた。気がふれそうだった。ぎりぎりだった。
車の横を流れる宍道湖の風景にすくわれた。




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宿の露天風呂で柔らかい温泉水に浸かったり、
湯上がりにハーゲンダッツ食べてまどろんだり、
出雲大社で素敵な老夫婦を見かけたり、
境港に足を伸ばして妖怪にほっこりしたり、観光っぽいしょうもない写真とったり、
笑ったり、真面目に話したり、ちょっと涙目になったり、
心の振れ幅が大きい、豊かな旅になりました。
連れて行ってくれた友人や、山陰情報をくれたFさんにも感謝。



写真というのは記録でしかない、と。カメラマンの友人は言う。
その瞬間シャッターを切ろうと思った、という心の記録である、と私は思う。
だから、私が撮る写真達は、どうってことのない写真かもしれないが、
それはそれでいいのである。