秋田、修三さんをめぐる旅
池田修三 木版画展「象潟まちびと美術館 ようこそ」
5/24(日)まで@象潟の様々なお店
修三さんは、1922年秋田県にかほ市象潟町生まれの木版画家。2004年に82歳で亡くなるまで、どこか憂いのある子供達たちや、象潟の風景を木版画で描き続けた作家さんです。センチメンタル、懐かしさを感じる独特のタッチ、色味。可愛いだけではない、何かがある作品!ついここ数年の間に、大阪でもHEPホールや梅田阪急百貨店で展覧会が開かれたので、知っている人も多いかも?その修三さんの故郷、象潟での展覧会に行ってきました。
まず象潟という町は、松尾芭蕉の奥の細道で訪れた最北の地。日本海に面し、秋田最南で鳥海山(ちょうかいさん)という2236mの山を越えると山形県。とーっても綺麗なところです。どこまでも広がるような田んぼ。黄色い菜の花畑。そして田んぼの中にポコンポコンと点在する松の林は鮮やかな緑色。その向こうに真っ青な空と大きな白い山!雪が積もってます。振り返ると日本海がキラキラ!
その象潟で町ぐるみの展覧会。なにが素晴らしいかって?
修三さんの木版画は、秋田では昔からみんなに親しまれています。中でも象潟では、旅館、お土産屋、本屋、ケーキ屋、銀行など、いたるところに修三さんの作品が息づいているんです。コレクターではなくて、たくさんの普通の人たちの家に原画が飾られている。というのも、結婚した、家を建てた、還暦を迎えた、子供が生まれた...人生の特別な日に、象潟の人たちの間では昔から、修三さんの木版画を送りあうという、びっくりするような習慣がある。原画ですよ?!この素晴らしい文化をありのまま活かして、町そのものが美術館であり、そこに暮らす人々たちが全員、学芸員であるというコンセプトのもと、旅人をおもてなししましょう!という、まちぐるみ美術館プロジェクトです。
だから、そもそもお店や家に飾られていたものもたくさんあって、日焼けしているものもあるんだけど、それがすっごいいい!お店のショーウィンドウや、階段、廊下、キラッキラッのお店や家じゃなく、ギャラリーなど飾るための整えられたスペースでもなく、日常の風景に溶け込んでいる。
たとえば、小さな和菓子屋さんに入って、絵を見せてもらって、「どんな時に買われたんですか~?」「新築したときに頂いてね~」とか「同じものを甥っ子が結婚したときにあげたのよ~今も玄関にずっと飾ってくれててね」とかとか・・・。お母さんたちの目尻に現れる笑い皺と、色あせた木版画をみながらおしゃべり・・・。じんわり感動して涙目になってしまいます。おまんじゅうをひとつ買ったら「これみんなで食べて」とさらに最中をもらってしまったり・・・。もう、ずっと感動しっぱなしです。
修三さんは、東京の画廊の人たちに、作品の値段を上げようって言われても上げなかったそう。それは、こういう風に、普通の人に原画を買ってもらって、生活の一部になりたかったのかも。そもそも原画をたくさん作って値段を安くできるから版画という手法を選んだのだとか。さらに感動~~~~。
ぜひ出かけていただきたいです。ただ!象潟の人たちはみんなとっても素朴でいい人ばかりです。イベント慣れしている都会っこじゃありません。たくさんの人が来ても対応できるようなシステムができてません。(注文しても出てくるのに時間がかかる、とかとか。)観光に特化した町でもない、普通の田舎の小さな町ですので、諸々マナーを守って下さいね。象潟へは、電車があまり本数ないので、秋田空港からレンタカーで行くのが便利かもしれません~。
木版画展以外の秋田旅行記は、また改めて。
刺激的であったり、心豊かであり、本当に色々と授かることができる旅でしたので。
旅館で修三さん
麺屋さんで修三さん
スーパーで修三さん
喫茶店で修三さん
和菓子屋さんで修三さん
中華で修三さん
飲み屋で修三さん