うたたねシアター

「脳内ニューヨーク」(2009/11/20 テーマ:WORK)

時々自分で自分を演じているのではないかと思うこと、ないですか?今日は○○さんのコンサートにいくから、この服を着ようとか。こんなふうに見られたいから、こんなふうにしてみようとか。それが大袈裟になっていくと、どこまでがホントでどこからが演出演技なのか、混乱してくるときがある。脳内と脳外の線引きが怪しくなるときがある。いや、どうだろう。混乱しとりますね、私。
それもこれも、この映画のせいであります。「脳内ニューヨーク」という映画。あの「マルコヴィッチの穴」「エターナル・サンシャイン」の脚本家、チャーリー・カウフマンの監督デビュー作品です。ええ、あんな感じで最高です。
人気劇作家ヘイデンは、自分の頭の中のニューヨークを巨大な倉庫に作り出し、役者はそれぞれの人生を演じるという壮大な芝居の構想を思いつく。芸術家っぽい発言は、まぁロマンがあってステキとも言えるんだけど、そもそものきっかけは、妻との離婚。月並み〜!この主人公ケイデンがホントにダメ男で、ハッキリしないんで、事態がどんどん悪化するわけです。どんなにダメかというと、妻と娘が出て行く→受付嬢ヘイゼル登場→いい雰囲気に→が、妻と娘が忘れられない→自然消滅→別の女優と再婚→が、前妻と娘、さらにはヘイゼルへの未練もある。最悪でしょ?ぐちゃぐちゃです。しかも、倉庫の中のニューヨークには自分自身を含める、これと同じ人間関係がもう1組あって、現実と芝居の中が複雑に入り組み始めて、わけがわからない展開に...。パラレルワールド。ワンダーランド。
書いていても何がなんだか分かんなくなってきちゃった。面白かったことを伝えようとすればするほど、説明できなくて泣きそうになる。混沌の中、映画の冒頭に出てくる「秋は終わりの始まり」というくだりが、今私の体内をグルグルと巡回しています。この火が消えない感じ、これこそきっとチャーリー・カウフマンの仕事、仕業です。