うたたねシアター
「歩いても歩いても」(2008/05/20 テーマ:DISCOVERY)
公開は少し先になのだけどすごくいい映画を見たので紹介させてください。「歩いても歩いても」という是枝裕和監督のホームドラマです。姉弟がそれぞれの家族を連れて実家に帰省してきた夏の終わりのある日。実はその日は15年前に亡くなった長男の命日で。原田芳雄演じる元開業医の厳格な父親と、父とそりの合わない主人公の阿部寛と、陽気な姉YOU、母親役は樹木希林。久しぶりに賑やかな食卓に料理の腕をふるう樹木希林と、手伝うYOUの親子のさりげない会話がたまらなく懐かしい。食材から香る新鮮な匂いさえ感じるような映像。外の暑さも、冷房を入れていないのになんとなく涼しい古い家屋の温度も、いちいち全てが伝わってくるんです。穏やかながらも、会話の中から滲み出すのは、みんなそれぞれの小さな「しこり」というか、愚痴というか、そういうもの。母のそれは時にひどく冷たいもので、それでもぶつぶつ言いながら歩いていくのが生活ってもので。または、分かっているんだけど言えないことや出来ない事を抱えて、あぁまた乗り遅れたって思いながら立ち止まったり引き返したり、それも人生なのかもしれない。そんな「ささくれ」を優しい視線で包んでくれるのがゴンチチの音楽。これがまた本当に素敵なのです。この音楽のおかげで、柔らかい気持で見終われるのだと思います。波風がありつつも、全部をなんとなく「そういうもんなんだよ、だから大丈夫」って悟すようなギターの音色。私、なんだか特別に土井家は不幸な気がしたり、自分ってなんて親不孝なんだろうって思ったりするんだけど、どこもみんなそれぞれ何かあるのかも。歩いても歩いても何かしら問題は発生するのかも。答えなんて死んでもまだ見つからないのかも。だからこそ、後悔しないように出来るだけの親孝行をしたいなぁって、樹木希林の見事なおばあちゃん姿を見て再確認しました。多分これを見たらこのお盆は帰省しようって思うはずですよ。