うたたねシアター
「母べぇ」「ペルセポリス」(2007/12/20 テーマ:MERRY)
まずは山田洋次監督「母べぇ」。太平洋戦争が起ころうとしている1940年〜1941年。舞台となる東京郊外の野上家では「父べぇ」「母べぇ」と言う具合に「ちゃん」の代わりに「べぇ」を付けて呼び合うんですね。そうしたらなんだか楽しいでしょ?だそうです。ええ、絶望的な時代に灯る小さな幸せの象徴です。浅野忠信が父べぇのかつての教え子「やまちゃん」役で登場するのですが、慌ただしくおっちょこちょいで、人の良いキャラクターがまた、ささやかな希望の彩りを添えます。だけど、励まし合って強く正しく生きればいつか...なんていう時代ではないんですね。言ってはならない言葉やしてはいけない事が、理解出来ない理由で押し付けられていた時代です。戦争も逃れられない現実なんです。やはり野上家からも1人ずつ去っていくのですが、その時に使われる「お世話になりました」という言葉に感動しました。その一言の後ろに隠れたたくさんの思い。私、お世話になった方に「御世話になりました」とちゃんと言えてるかな。いい加減に使ってしまってるな。ちょっと落ち込みました。偶然もう1本見たフランス映画「ペルセポリス」は、イラン出身のマルジャンサトラピ監督自身の半生を綴ったアニメーション。1978〜90年代の激動するイランが舞台。私が生きてきた時代にも、細かいことは違えど「母べぇ」と同じような絶望的な日々と、そこでささやかな楽しみを糧に暮らす強い心を持つ人達がいたのか!急に絶望というものがリアルに感じられてきて自分が情けなくなりました。こうしている今もどこかで絶望が生きていて、日本はこんなにボケている。努力すれば手に入るものが多いし、議論で自分の意見が認められることもある。なのに、誰かを傷つけることでしか楽しいと感じられないドアホな誰かさんが、教室にも職場にもバーチャルな世界にも溢れています。...話が飛躍しすぎた感がありますが、年末年始にちょっと襟元を正したい気持ちになりました。