うたたねシアター

「オリヲン座からの招待状」(2007/10/20 テーマ:SMILE)

例えば、駅の階段。1人が走り出すと周りもつられて走り出すんですよね。疑いの眼差しのあなた、試しに電車の時刻表とは関係なく、無意味に駆け上ってみてください。知らない誰かが絶対あとを駆け上がってきますから。・・・「つられて」っていいですよね。なんか平和な響きです。そうね〜って思った人に今月おすすめしたいのが、浅田次郎の短編小説の映画化「オリヲン座からの招待状」です。舞台は昭和30年代、京都の映画館「オリヲン座」。館主が亡くなったあと、未亡人となったトヨ(宮沢りえ)と、館主の弟子だった留吉(加瀬亮)が、貧乏に耐えながら映画館を守り続けるというお話。夫の夢を継ぐ、先代への恩をかえす、そんな固い意志を胸に生き抜くわけですが、未亡人が若い燕に手をつけた的な陰口を酒の肴にする人もいるわけです。あぁうるさい。ただ実際、同じ方向にむいて必死で生きる男女の間に愛情が生まれないわけがなく、むしろ、そういう状況で育まれるお互いへの思いやりは、男女の愛というより家族愛のようなもので、すごく純粋で綺麗なんですね。蛍を眺めながら初めて二人が手をつなぐシーンが、ほんと穏やかで暖かく素敵です。二人の暮らしには、ゲラゲラ笑うというよりは、何かに微笑むのを見て「つられて」微笑む・・・ささやかな笑顔が溢れていて胸うたれます。この瞬間きっとすごく幸せだろうなぁって思うシーンがいっぱいです。ただでさえインスタントなお祭り騒ぎが多いうえに猛暑だった今年の夏を過ぎ、疲れてるのは体だけじゃなく気持ちもバテてるはず。シンプルなものを求めているはず。きっとこの映画がじんわり効くと思います。
にしても!今年は加瀬くんの映画がたんまりで加瀬ファンの私はうれしくって仕方ないです。しかも色んなタイプの加瀬君が見れるなんて。ただ、この映画は加瀬君も素敵だけど宮沢りえが素晴らしい!老け演技、疲れた女の宮沢りえ、ほうれい線がセクシーです!