うたたねシアター

「青い車」(2004/10/20 テーマ:ビター)

ARATAと宮崎あおいが共演する、しかも音楽は曽我部恵一でライブのシーンもあるらしい。そんな情報で見に行きました。奥原浩志監督「青い車」。共同脚本に『リアリズムの宿』の脚本家・向井康介。原作は、よしもとよしとも。24ページの短編漫画だそうです。主人公は中古レコード屋で働くARATA演じるリチオ。子供の頃に事故に遭いながらも命を取りとめた過去がある。そこから自分は生きていることだけでラッキーだと思う反面、死に損ねたという負い目のような感覚に追い詰められて、自傷行為に逃げる日々。恋愛も仕事も含めての生活すべてをなんとなくやりすごしている。だから上手くいっている恋人とも、どこか歯がゆさがあって、恋人の妹と関係をもってしまう。そんな時に恋人が事故で亡くなって...。恋人の妹このみ役が宮崎あおい。幼いながらも挑発的な表情が見えたり、大人びた切ない目をしたり、本当に魅力的な女優さんだと改めて思いました。私は原作を読んでいないので比較することはできないけど、たった24ページのマンガを90分の映画にするというのは、いったいどんな作業なんだろうか。原作よりも長く長くリチオのやりきれない毎日が大小の出来事とともに描かれることで、彼のモヤモヤとした心模様が本当によく理解できるし、自分とちゃんと向きあえない弱さも痛い程わかりました。そういうのって他人の事はちゃんと見えるんだけど、自分の事となるとねぇ、現実から逃げちゃうんですよね。そういうもんです人って。映画の終盤の宮崎あおいの台詞で、この映画を象徴する一言がありました。「でも、苦しいよ、チクチクするんだ」。自分のせいで姉が事故に遭ってしまったのではないかと思う自分と、そんなわけはないと思う自分。私は帰り道、泣いてしまいました。その時は理由が分からなかったけど、きっとこの苦い煮え切らない感情に心当たりがあるからだ。私も逃げている私に向かい合ってしまったんだと思う。