うたたねシアター

「誰も知らない」(2004/08/20 テーマ:COOL)

是枝監督「誰も知らない」見ましたか?そうです、主演の柳楽君がカンヌで最優秀男優賞を日本人初受賞した、あの映画です。素晴らしい映画だと本当に思いました。今回のテーマ「COOL=冷淡、冷静沈着、熱意のない、すばらしい」と辞書には載っていましたが、どれが私が「誰も知らない」に感じた「COOL」でしょう?「出生届が出ていない4人の子供が母親に置き去りにされた」という実際にあった事件が元になっているのを御存じの方なら、「冷淡」だと思うでしょうね。私自身も映画を見るまでは、子供達が可哀想だと思ったり、母親や周りの大人達に怒りを感じたりしていました。だから、映画のチラシのキラキラした写真(川内倫子さんが撮影!)を見て、内容とのギャップを感じたし、落ち込むのが嫌なので何度も試写会を見送ったんです。...でも!驚くことに「怒り」「憐れみ」なんて全く感じませんでした。号泣しましたけど...。監督は事件から15年考え続けてきた中で、怒りが愛情に変わってきたのだそうです。子供達の生活の中に小さな喜びがたくさんあって、それが切なくもあるのですが、不思議な優しさや愛情に似た空気が溢れているんです。母親に対しても(YOUで良かった!)怒りを超えた感情を抱きました。生きるってどういうことだろうかと考えます。生物の本能として生き延びようとしますが、多かれ少なかれ、それだけになっている時が自分にもあるのではないかと。人間という生物として生まれたのならば、人間という生きのばしをしなくては、と思うのです。映画を見て4日経過した私は今こんなふうなこと考えています。たぶん人それぞれ感じ方も、その後何を考えるかも、それぞれ違うと思います。ただ、公開になって「怒り」「憐れみ」だけが取り上げられないことを願います。たくさんの人が真剣に見て、この映画や自分の人生について、じっくり考えて話をしてほしいなぁと思います。本当にCOOL=素晴らしい映画だと思います。