うたたねシアター

「The Fall落下の王国」(2009/06/20 テーマ:FESTIVAL)

「The Fall落下の王国」を見ました。ポスターや予告編などで見る絵が色鮮やかでスケールが大きくて気になっていた作品です。実際見てみるとモノクロのシーンでさえ鮮やかに感じるほど、徹底した美しさ!
舞台はある病院。主役は入院している映画俳優のロイ。撮影中に落下して足にハンデを負い、しかも恋人に振られたばかり。そんなロイが、オレンジの木から落ちて腕を骨折して同じ病院に入院している女の子アレクサンドリアに毎日少しずつ「お話」をきかせるというもの。そんなに衝撃的な設定ではないでしょ?それだけに美しい映像だけが印象に残るのかと思いきや、逆に心が揺さぶられる、絶妙なバランス!なんと構想は25年前からターセム監督の中にあったという!どうりで!
舞台が病院なので、気になるのはロイとアレクサンドリアの怪我はどうなるのか。それが「えっ、そうなん?」という、全く私が思っていなかった展開で意外でした。そして、ロイの聞かせる作り話がロイの気持ちの落ち込みにそって悲しいストーリーになっていくのです。それは幼いアレクサンドリアにとっては理屈抜きに「そんなのはいやだ」なお話。どんな事があっても主人公が死んじゃったらいやだ。
何らかの感情が沸点に達したとき、その感情をエネルギーに命が燃えるのを私は感じます。命の炎が燃え尽きる時、「死にたい」という気持ちが資源になっているのは、やっぱりたまらない。いろんな気持ちで命と向き合っている登場人物がいます。どれもわかるけど、結局のところは、愛くるしいアレクサンドリアの子供らしい単純な気持ちがまぶしく光る、ささやかな命の祭典のような映画でした。
なんだか重い文章になっちゃってますが、どうぞもっとお気軽に!アレクサンドリアの生えそろっていない歯、触りたいくらいのほっぺた、無邪気さ、可愛いですよ〜。だから余計にロイに自分のくだらない悩みを重ねて、あれこれ考えちゃうんですよね。あは。