うたたねシアター

「それでもボクはやってない」(2007/01/20 テーマ:LOVE)

「FROG RIVER」以来の6年程、とにかく加瀬亮にラブなのです。06年は「ハチミツとクローバー」とか「硫黄島からの手紙」など、取りあげられやすい作品への出演が多かったので、皆さん御存知だと思います。私は「アンテナ」の加瀬くんがとても好きなんですけど、新興宗教にハマる母親、精神状態が破壊してしまう弟、自傷癖からSMによって開放されていく自分、というとてもじゃないけど想像出来ないような設定の役どころなんです。だけど、すごくリアルでこりゃ凄いと思ったのを覚えています。かと思えば、「誰も知らない」ではコンビニ店員の役で、あの存在感のなさといったらまさにコンビニの店員なんですよね。あんなに気配を消せるなんてすごいです。そう、何が凄いって突飛な役より普通を演じたときの普通ぶりが凄いんです。そんな加瀬君が「満員電車で痴漢に間違われる」という普通の青年役で主演しているのが、周防正行監督の最新作「それでもボクはやってない」です。周防監督の11年ぶりの作品でテーマは裁判。裁判なんて非日常な感じがしますけど、実はいつ自分のことになるか分からないんだって気付きました。間違いなく加瀬君演じる青年もそう思っていただろうし、無実の罪に問われた普通の人が、裁判が始まって1年の間に感じる色々な感情が、もう、ほんとにリアル!そしてその場にいた人達のバラバラな記憶や、被害者の女子高生の「たぶん」「だと思います」という曖昧さでも立派な証言になってしまうという事実。「疑わしきは罰せず」なはずなのに、そうはいかない裁判制度。なんて暮らしにくい世の中なんでしょう。気付けば傍聴席で裁判を見守っている自分がいました。うーん。はがゆい!だけど「それでもボクはやってない」んだ!すごい普通の発言がタイトルになっていて、なんか全てを物語っていて、あぁ加瀬君が主演でよかった。本当に真面目だけど面白い映画です!おすすめ!