うたたねシアター

「夜のピクニック」(2006/08/20 テーマ:Sweet)

恩田陸「夜のピクニック」読みました?本屋の店員さんが「今一番読んでもらいたい」本を選ぶという『本屋大賞』を受賞した小説です。「博士の愛した数式」や「東京タワー」も受賞している、あれです。ワタクシ読んでません。ベストセラーなんていわれると読む気がなくなってしまう悪いタチでして。
舞台はある高校の、夜を徹して80キロを歩き通すという、高校生活最大の一大イベント「歩行祭」。夜をまたぐということは、修学旅行よろしく「恋バナ」に花が咲いたり、告白するしないの決戦の日だったりなわけです。そんな中、主人公の貴子は、3年間一度も話せなかったクラスメイトの西脇融に声をかけようと決心しています。西脇も貴子を意識しているのは事実。ただしこれはどうやら普通の片思いとは事情が違うらしい。お互いに胸に秘めたわだかまり。思い込みと意地が秘密を増やして言葉数を減らしていく。そして・・・。言い出したいのに言えないもどかしさ。どうして言ってくれないのかという寂しさ。打ち解けた時のすがすがしさ。あぁ、甘酸っぱい。まさしく青春!そして80キロのゴールは、実はスタートゲートでもあるのです!青春!青春や〜!あぁきっと原作も素敵なんだろうなぁ。全ての登場人物の気持ちの描写が読んでみたい。丁寧なんだろうなぁ。そういえば「博士の愛した数式」も、たおやかで素晴らしい映画でした。きっと原作の日本語が素晴らしいからこそ、こういう質感になったのだろうなって、あ、ちょっと読んでみたいかも、原作の日本語に触れてみたいかも・・・そう思える映画でした。とはいえ、変な意地もありまだ読んでないんですけど。分かってるんですよ、読んだらいいねん。「夜のピクニック」も「博士の愛した数式」も。たかだか本1冊ごときに大袈裟にひとりもがいてしまう。汗の匂いとシャンプーの匂いが混ざったかのような、甘酸っぱい青春まっただ中の香りが、1シーン1シーンに立ちのぼる映画です。