うたたねシアター

「初恋」(2006/07/20 テーマ:WILD)

1968年に起きた3億円事件は女子高生が犯人だったという小説「初恋」が映画化されました。実は事件についてほとんど知らなかったし小説も読んでなくて、ただ主演の宮崎あおいが好きなので見てみたのです。極道モノとか刑事モノとかけっこうワイルドでハードなのを想像していただけに、びっくりしました。タイトル「初恋」まんま、実は初恋の話なんです。皆さんはぜひ事件のことは忘れて見てみてください。その方が、丁寧に描かれている幼い恋の起承転結をしっかり感じられると思う。主人公は女子高生みすず。初恋の相手は新宿のJAZZ喫茶で出会った東大生の岸。みすずが恋心を暖めている中、仲間が学生運動に巻き込まれ、岸に現金輸送車から現金を強奪する計画を打ち明けられるのです。実行の日が近くなると、みすずはある不安に襲われます。それはこの計画がうまくいけば、もう二度と岸には会えないかもしれないということ。現金よりも計画がうまくいくかよりも、岸を慕う気持ちに心をとらわれているのです!出会い仲良くなり二人の秘密ができて...。徐々に進む関係に要所要所でみせるみすずの表情がそりゃぁ素敵です!一番好きなのは、みすずが岸に頭をなでられるシーン。安堵感とか切なさとか色んな感情のピークがあそこには集結してる!未熟な表現って胸をうちますね。岸にしても、あれが精一杯の愛情表現だったのかもしれないし。未熟とも言えるけど、すんごい清純なんですよね。しかも詩集に走り書きのように書いた未熟な愛の言葉は、みすずにちゃんと届くのです。届いたとしても、永遠に失われたままですけど。うわーこれぞ初恋だわ。この事件で奪われた3億円は実際まだ1円も使われていないそうな。お金目当ての強奪ではなかったってことでしょう?ますます映画の筋書きが本当の事件の真相のように思えてくる。だとしたら、犯人は初恋に心を捕われたまま暮らしているかも。「心の傷には時効がない」という宣伝文句にやられました。